本記事では、アメリカにおける暗号資産ETFの承認の影響と日本における暗号資産を対象にした投資助言の法的課題について解説します。

◇アメリカにおける暗号資産ETF承認の概要とその影響
 2024年1月10日アメリカの証券取引委員会(SEC)が代表的な暗号資産の一つであるビットコインの現物ETF(上場投資信託)11本を承認しました。
 これにより、ビットコインの現物ETFがアメリカで初めて承認されたことになります。
 ビットコインのETFの上場認可は、今回の事例が初めてではなく、2021年にはカナダでビットコインの現物ETFが承認され上場しています。また、ブラジルの証券取引所でもビットコインのETFがすでに承認されています。
 アメリカで、ビットコインのETFが上場されることで、投資家は、SECの監督下にある証券会社の証券口座を通して、株式などと同様にビットコインETFの売買を行うことができます。
 今回のアメリカでの承認で、世界最大規模のETF市場であるアメリカでビットコインETFが上場されることとなったことは、ビットコインのステータスを大きく高めることになりそうです。
 また、今回の承認は、ビットコインを含めた暗号資産全体のステータスをも高めるきっかにもなり、投資家がこの分野への投資をより積極的に行うようになる呼水になるかもしれません。
 一方で、Vanguard Gropのように、暗号資産の価格変動が激しい事、暗号資産の市場が未熟であること、暗号資産への投資には高いリスクが伴うことを理由に、暗号資産に関するETFを取り扱わないことを現時点で、決定している証券会社や資産運会社もアメリカにはあるようです。
 現在は、投機目的で保有されることの多いビットコインをはじめとする暗号資産ですが、健全な投資対象として発展していくためには、実際に社会において有益な役割を果たすことが求められることになりそうです。
 ビットコインETFの上場承認に続き、2024年7月22日SECは、アメリカのおけるイーサリアムを運用対象とするETF9銘柄の上場を承認し、翌日からアメリカの主要取引所において同ETFの取引が開始されました。
 2024年11月のアメリカ大統領選挙で、暗号資産に関する規制緩和に積極的だと言われているトランプ氏が勝利したことを受け、暗号資産への注目がさらに高まる中、日本においても暗号資産ETFの上場が認められるのか注目されます。

◇日本における暗号資産を対象にした投資助言の法的課題
 アメリカにおける暗号資産ETF承認を受けて、投資家の暗号資産投資へのニーズはますます高まりそうです。
 2024年12月現在、日本の証券取引所での暗号資産ETFの取り扱いはありません。
 このように日本の証券取引所では、暗号資産ETFの取り扱いはありませんが、海外の動向を受けて、日本でも将来的には、暗号資産ETFが上場されるかもしれません。
 前述したように、IFA事業者の場合は、日本の証券会社が暗号資産ETFを取り扱っていないため、現状では、直接的なビジネス上での関わりは生じないと思いますが、投資助言・代理業者が顧客から暗号資産投資についての相談をうけた場合は、現物の暗号資産への投資か海外のETFに投資することを助言することになります。
 最後に、顧客に暗号資産投資に関するアドバイスをする際の注意点についてですが、ビットコイン等の現物暗号資産に対する助言につきましては、2024年12月現在、投資助言・代理業への登録は必要ありません。
 加えて、暗号資産の信用取引に関する助言も、投資助言・代理業に該当しないとされています。
 一方注意すべき点として、暗号資産の信用取引に関する助言を行う場合でも、当該助言が、信用取引に対する助言なのかデリバティブ取引に対する助言なのかによって、投資助言・代理業に該当するのか否かの判断は変わってきますので、これを行う場合は、慎重に行う必要があります。
 ただし、現物暗号資産に関する助言についても、2024年下半期に暗号資産の金融商品取引法への組み入れ議論が金融庁で開始されたため、将来的には、現物暗号資産に関する助言を行う際に何らかの登録を求められる可能性があります。
 一部報道によると2025年1月の通常国会への改正案提出が目指されているともされており、この分野の助言を顧客に提供する場合は、こうした法規制の変化にも注意しながら慎重に行ってください。