結論から申し上げますと投資助言・代理業と金融商品仲介業の兼業は制度的には可能です。ただし、実際に兼業する際には、いくつか困難な課題がありますので、今回はこの件について解説していきます。
◇IFA事業者(金融商品仲介業者)が投資助言・代理業に登録する際の課題
多くの場合、IFA事業者(金融商品仲介業者)が金融商品の販売に加えて、投資助言を行いたいと考えて投資助言・代理業者に追加的に登録を考えることが多いかと思います。
このような事例では、投資助言・代理業に登録する際に、販売と助言の間に発生する恐れがある弊害を防止するための高度な弊害防止措置を構築することが求められるため、登録するための難易度が通常よりも高くなります。
従って、兼業を希望する事業者が登録するためには、内部の人員確保や外部の専門家の支援が必要となる場合が多く、そのための追加のコストが永続的に発生することになります。
具体的には、コンプライアンス部門や内部監査部門の機能強化のための追加的な人員配置や両部門への弁護士等の外部専門家の業務支援が追加的に必要なると思われます。
◇登録後に発生することが考えられる課題
実際に投資助言・代理業と金融商品仲介業を兼業して業務を行う場合、社内で販売と助言の線引きについて常に細心の注意を払って業務を行う必要があります。
この際注意すべきは、事業者としては、販売と助言の線引きについて常に細心の注意を払って業務を行う方針をとっていても、従業員には、自己の営業成績のために助言を希望する顧客にも金融商品の販売を行いたいという動機が生じがちであるという点です。
このような事態になると、顧客の立場に立ってみれば、助言を受けたいと考えて投資に関する相談をしたのに、金融商品の購入を勧められたと感じれば、クレームの発生につながってしまいます。
クレームの発生が多い事業者は、規制当局からの無予告での臨店検査の対象となりやすくなりますので、このような事態の発生は避けなければなりません。
このような事態を避けるための対策としては、助言を行う部門と販売を行う部門も完全に分離することが考えれますが、このような対策をとるためには、一定以上の事業規模が必要になると思われますので、現実的にこのような対策をとるのは困難であると考えられます。
◇まとめ
投資助言・代理業と金融商品仲介業の兼業は制度的には可能であるものの、登録する難易度が通常よりも高くなり、コストもその分高くなってしまいます。
また、登録後も、販売と助言の線引きが難しく業務運営もより困難になることが予想されます。
こうした諸要素を考慮する投資助言・代理業と金融商品仲介業いずれかに絞った方がビジネス的には合理的な場合が多いと考えられます。
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